自作廃油ストーブ

   
   <材料>
   LPガスボンベ(容量5Kg)・単管パイプ・ブロアー・エンジンオイルペール缶・エアレギュレータ・
   鉄アングル材・キャスター・水道管・水道缶用エルボ ・・・等々

 LPガスボンベを燃焼炉にした強制送風式廃油ストーブです。




 廃オイルを100リッターほど貯めてしまったため、なんとか処分するために、試しに作ってみました。
 廃油処理するため、はじめは、オイルを鹸化させて、固めてポイしようと思い、廃油処理剤で固める実験をしました。固めるテンプルなんてものでは到底追いつかない量なので、業務用のものを探してみました。
 行き着いたのが「ピートソーブ」と「かたま〜る」。用途的にはピートソーブの方が適してるんですが、値段が高過ぎるため、本来は食用廃油処理剤である「かたまーる」を買ってみました。業務用で安いため、これなら廃油パックより安上がりです。
 
結晶の大きなホウ酸みたいな粒状の薬剤です。体に悪そうな臭いがします。「熱した廃油に投入」とあるので、強アルカリで鹸化させるモノではなく、脂肪酸の一種かと思われます。牛脂で代用できるかも知れません。

 ものすごい臭いをさせながら台所で廃油を熱して、ここぞとばかりに「かたま〜る」を投入、段々冷めていくうちにとろみを増していくのですが、固形化までは至りません。
 混合率が悪いのかと、多めに入れたり少なめに入れたりしているうちに、まあまあうまくいったものが出来上がりました。適正混合率見つけたり!と思ってもう一度やってみたところ、さっきみたいに固まりません。
 色々考えた結果、粘度の高いギアオイルの廃油はうまく固まるが、さらさらのエンジンオイルはどうがんばってもトロトロまでしか固まらない、ということを発見しました。
 うまく固まったギアオイル廃油はそのままゴミ袋に入れて捨てられましたが、エンジンオイル廃油の処理は、中途半端にトロトロになってだらしなく流動してしまうので元の状態よりもたちが悪く、結局廃油パックに無理矢理吸わせて捨てました。
 散々苦労したのに、使えないということがわかり、もう燃やすしかない、という結論に至りました。ちなみに大量に買ってしまった「かたま〜る」は天ぷら油処理用に妻に贈呈しました。多分、娘(3才)が成人するくらいまではもつでしょう。

 (※後日、クーラント固めてポイには成功しました。)

 で、廃油ストーブの製作です。
 新品の市販品を買うと、一番小さなものでも10万円を超えます。やはり作るしかないです。
 原理は簡単で、廃油を燃焼炉底にためて火をつけその一時燃焼によって気化した未燃焼オイルに酸素を供給してやって二次燃焼させればいいのです。
 自作された方のHPを調べてみると、大きく分けて、強制送風燃焼式と自然燃焼式の2タイプに分けられるようです。自己完結自然燃焼型の方は、一度火をつけたら送風装置なしで燃え続けるというもので、燃焼炉やエントツの形状等にかなりのノウハウと工夫が必要なようなので、簡単に作れる強制送風式に決定。
 製作にあたって一番の問題は、燃焼炉と送風機を何にするかということと、燃料(廃油)供給装置の作成です。
 燃焼炉はオイルペール缶では全然耐えられないようなので、安くて手に入り易くて加工が簡単なもの・・・プロパンガスボンベしかありません。ヤフオクで100円で購入。
 送風機は、中古のシロッコファンを探してみましたが、どれも高いためあきらめ、ホームセンターで売ってる中で一番安いブロワーを購入。
 燃料供給装置は、20lペール缶の底部に穴を開けてそこにガスボンベのレグレーターを付けようと思いましたが、ボンベからレギュレーター部分を取る際に破壊してしまったので使えず、その辺に転がってたエアコンプレッサー用のレギュレーターに変更しました。缶からレギュレーターを通って廃油を滴下させ、水道管を加工した燃料パイプを通して燃焼炉に溜まるようにしました。結果オーライな材料選定ですが、完成してみれば、このコンプレッサーレギュレーターの絞りが最適で、うまく燃焼コントロールできています。


 材料がそろったのでいよいよ組立です。
 完成後の写真しかないのですが、↓がバラバラにした状態です。

 ボンベとフレーム、ボンベと送風管を固定せずに分解できるようにしたのは、燃焼炉の掃除をするためです。燃料が廃油なので、どうしても燃えカスがたまります。

 ボンベはレギョレーター等を取っ払い、グラインダー等で切断&溶接しますが、切断には気を使いました。プロパンガスがまだ中に少し残ってたので、完全に抜いたつもりでしたが、グラインダーの火花で引火して爆発しないかと恐る恐るだったので。(後でわかったのですが、こんな場合はボンベに水を充填してガスを抜くのが常套のようです。)
 送風パイプは得意の足場パイプです。50パイという口径がピッタリで、継手や蓋などの必要部品も簡単に手に入ります。給油パイプと一次燃焼用送風管は水道管です。1/2だったか3/8だったか1/4だったかは忘れました。
 切って溶接切って溶接、穴あけ穴あけの繰り返しです。
 


 ↑一番大事な送風部です。
 一次燃焼用は、送風パイプ最下部をふさぎ、横向きに180度間隔で水道管を溶接し、先端をハンマーで叩いて縦に長く潰して風速を高めるようにします。
 二次燃焼用は、燃焼炉内に入る送風パイプ部に3パイだったか5パイだったか忘れましたが、ドリルで穴を無数に開けていきます。
 写真青矢印のように酸素供給されるように設計してみたんですが、完成後に燃焼状態を見てみると、一次燃焼は、ボンベ内を火炎がグルグル回って具合よさそうなんですが、ボンベ上部には火炎がまわっていません。一次燃焼も二次燃焼もボンベ下部でほぼ同時に起こっているようで、二次燃焼用の穴はあまり意味がないような感じです。まあ、完全燃焼はしているようなので好しとしてます。

 次は燃料供給管の作成です。
 水道管を切り、傾斜をつけてボンベ下部に溶接します。タンク側には一回り大きな水道管の継手を溶接し、滴下する廃油を受けます。



 ↑ここで、最少構成部品を仮組みし、試運転してみました。(↑の写真では、送風部の一部は外してあります。)

 灯油を染み込ませた布切れで燃焼導入し、火の勢いが大きくなってきたところで徐にブロアーのスイッチを入れます。その後は廃油のみで燃焼します。燃焼導入時には多少の煙が出ますが、燃焼が安定すると無煙です。
 本当に燃えるのか不安でしたが、そんな心配吹き飛ばすような勢いで燃えます。
 「うぉ〜燃えろ燃えろ!!」と興奮してきて燃料をオイラーで多めに注入していくと、どんどん火の勢いが強くなり、ボンベが真っ赤っ赤になってきました。ボンベが溶けそうな勢いです。
 ここでふと我にかえり、注入を止めます。そこでやっと気付いたのですが、燃焼の止め方を全く考えていなかったことに気付きましたが、燃料供給をやめると火は段々弱くなり、送風で消えそうなくらいの勢いになったところで送風をストップすると止まります。
 試運転成功です。それにしても廃油ってのは、燃えにくいが、一度火がつくとなかなか消えない、という結構危ないものです。

 ただひとつだけ計算外の現象が起こりました。燃料供給パイプを伝って燃焼炉底部に溜まる途中で、熱せられた燃料供給パイプと燃焼炉によって廃油が気化し、燃料供給パイプ注入口からものすごい煙が出てくるのです。燃焼自体は無煙ですが、この気化廃油の臭い煙で辺り一体真っ白になってしまいました。近所の人に消防車を呼ばれないか心配でした。
 この改善策として、当初は一案しか頭にありませんでした。水冷です。試運転で煙だらけになったとき、ちょうど冬で雪が積もってたのでとっさに雪をつかんで供給パイプを冷やして事態を収拾できたため、これは水冷にするしかない、と思い込んでました。
 何日か悩んで冷静になった結果、現実性の無い水冷案ではなく、気化廃油を送風パイプに吸わせればよい、ということに気付きました。

 で、↑写真の黄色線で囲った部分、バイパス管を追加しました。
 赤く囲った燃料供給パイプから逆流してくる気化廃油を、ベンチュリー効果で送風管に戻してやるのです。
 テキトーに水道管を切り、テキトーに角度を付けて溶接して再度試運転。
 結果、煙は発生しなくなりました。ただし、狙いとは逆の結果で、です。送風管に吸い込まれたのではなく、逆に送風管から風が送られてきて、発生する煙を燃焼炉に押し込み返しているのです。写真青い矢印と逆の方向に風が流れているようです。注入口からも風がでてきてます。
 原因は明白、バイパス管の設計施工ミスです。テキトーに付けた角度が悪かったので、ベンチュリー効果は発生せずに、逆に送風管になってしまったのです。
 ま、結果オーライ、煙は出なくなったのでこれで好しです。
 ただし、注入口から風とともに燃料が逆流してくるようになってしまったので、自然落下させていた燃料を、レギュレーター出口からバイパス管のあたりまで耐油ホースを這わせて、燃料逆噴射をおさえました。


 テキトーなアングル材でフレームを組み、完成です。

 廃油ストーブとはいうものの、思ったほど周囲は暖かくならないため、ストーブとしては実用性ありません。第一、こんなものを室内に持ち込んで使おうという気持ちにはなれません。ま、元々、大量にたまってしまった廃E/Gオイルを燃やすために作ったものなので、所期の目的は達成されたといえるでしょう。
 というわけで、「廃油ストーブ」改め「廃油焼却装置」です。廃油消費量1liter/hぐらいと非効率きわまりないですが・・・。


 本当はこんな煙突を付けようと用意してましたが、付けなくても燃えるし、面倒なのでつけてません。もしかすると、煙突を付けて二次(三次?)酸素供給を活発にするともっと効率よく燃えるかもしれません。


 なお、心配される方がいるかもしれませんので追記しておきます。
 推定燃焼温度800℃ぐらい?なので、多分ダイオキシンは発生してません。自動車の潤滑オイルには塩素系の添加物が入ってますが、そんなもの非常に微々たるもので、危険数値まで到底至らないでしょうし、第一、完全燃焼しているので、成分的に車の排気ガスよりクリーンだと思います。
 環境負荷は、理論的には普通の灯油ストーブと同じくらいではないかと思います。



廃油焼却装置 燃焼状態




 後日、自然吸気式も作成しました。


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