最初に言っておきます。「おかしな、バイク修理」ではなく「おかしなバイク、修理」です。「おかしな」は「修理」にかかるのではなく「バイク」にかかる形容詞です。 1ヶ月ほど前に飲んだ席で、友達から不動バイクの修理の相談を受けた。酔っ払った勢いで「任せとき、動くように直すか、希望価格で売っ払ってあげるよ」と言ってしまった。次の朝、酔いがさめて非常に後悔したことは言うまでもない。 自分の自由に使える時間がほぼゼロに近い私の日常で、自分のCZ150Rすら完動絶好調なわけではないのに、話から察するにキャブ不調っぽい正体不明なそのバイクを直す余裕があろうか? 「まぁ、2人ともかなり酔ってたから、そんな話忘れてるやろ」と思うことにした数週間後、恐怖の電話はかかってきた。泥酔状態でのこの話をそいつは憶えていたのだ。 というわけで、得体の知れない不調バイクが1台転がり込んできた。 友人の話によるとこいつは、某バイク屋に作ってもらったスカチューンカスタムバイクで、かなり旧いバイクのフレームを使ってエンジンだけ新しいSRのエンジンに載せ換えたものらしい。 フレームはDなんとかというバイクのもので、エンジンは多分SR系の250ccエンジン、2年前のある日まではまぁまぁちゃんと動いていたらしいが、ある日エンジンがかからなくなってそのまま倉庫で2年間眠っていたようです。 Dなんとかって言うヤマハの旧いオフロード系バイクっていうと・・・空冷時代のDT250かな? でもこうやって現物を見てもこのフレームがDTのものなのかどうかは全くわかりません。後半部分は切断してあるし・・・。 |
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SRのエンジンだと想像してたけど、これ、ツインカムやん・・・。SRX250のエンジン? キックペダルはいいんやけど、スターターはどこ?どこにも居られる気配が無いし第一、スターターボタン無いですがな。SRXってスターター付いてなかったっけ? っちゅうことは、直して試運転でエンジンかける際には、私は汗だくで重たいキックを一所懸命蹴らなあかんのか?勘弁してくれ・・・。 それにしても各部、素人っぽい作りこみです。 どんなバイク屋に頼んだんや?というか、かなり値切ったやろ? |
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面倒くさいことを頼んできたくせに「雨ざらしするな」とのことなのでわざわざ重たい扉を外してメカニックルームに入れます。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
こうやってバイクを入れて見てみると、「ガレージライフ」みたいでちょっといい感じかなと思っちゃったりします。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
そしてじっくり観察。 フレームとクランクケースに30Xて書いてある。 空冷DTではなくて1983年発売のXT250Tじゃないかこれ? エンジンもSRXじゃなくてXT250Tのものそのままっぽい。どっちにしてほとんど同じエンジンではあるが。 どうりでスターターが付いてないわけだ。 というか、寄せ集め正体不明バイクだと思ってけど、これ、ガソリンタンクや細部を除いてほとんどXT250そのままやん。 |
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不動になった経緯から察し、キャブ不調であることはほぼ間違いないので、キャブO/Hです。 その前に一応プラグを確認。 見事にかぶってます。 |
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そしてキャブを外します。 変なキャブ。片側が負圧式可変ベンチュリで片側が固定ベンチュリ。 ちょっと調べてみると、この時代のSRX250とかXT250Tのエンジンに付いているYDIS(ヤマハ・デュオ・インテーク・システム)なるもので、低回転時は固定ベンチュリ側をメインにし、高回転になってくると負圧式側も加わる、という方式のようです。 |
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固定ベンチュリ(プライマリー)側のフロート室とメインジェット。 案外きれいです。 |
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各部固着もなく、全体的にきれいです。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
エンジン側から。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
負圧式(セカンダリー)側。 ダイヤフラムのゴムも破れなく、まだ使えそうです。 |
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ダイヤフラム室内のこの通路が少し詰まり気味でしたが、他は特に詰まっている箇所はなかったです。 でも折角バラしたので、エアガンとブレーキクリーナーで全ジェットと通路を掃除しておきました。 |
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セカンダリー側のメインジェットとニードル。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
プライマリー側のジェット類。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
XT250Tの純正データと、この個体の状態一覧 XT250T(1983.4月 30X型) ・ エンジン型式:30X
元々単車屋がセッティングしたままの状態で乗っていて、不動になるまではまぁまぁ快調に動いてたらしいので、このままでいいのでしょう。 ということで清掃しただけでキャブを元に戻します。 そして、手持ちの新品プラグが無かったので、とりあえず元のプラグを掃除して付け、エンジンかけてみます。 50〜60回くらいキックして、それでもダメなら長い坂の上から勢いをつけて押しがけする覚悟はしていたのですが、キック十数回であっさりとエンジン始動。 どうやらただの「ひどいプラグかぶり」だったようです。 少し試乗してみましたが、↑のセッティング、プロがセッティングしたにしてはちょっと???です。 なんとか始動はしますが、アイドリングで頻繁にエンストします。低回転でちょっと薄すぎる感じ。物凄く乗り難い。 スカチューンなのはわかりますが、エアクリBOX付けないとこの状態じゃぁ不安定すぎ。 でもこんなおかしなキャブのセッティングなんて絶対にしたくないので、プラグを新品にして、エアクリBOXを付けるように忠告して納品。 |